「いつもの散歩セットがあれば、旅行も大丈夫」——そう思っている飼い主さまは、意外と多いのです。
銀座本店のレッスンで、先月こんな相談を受けました。柴犬のハルちゃん(1歳3ヶ月)と初めて伊豆の宿に泊まった飼い主さまが、「荷物は普段の散歩バッグで行ったんですが、現地で困ることばかりで……」と肩を落としていたのです。慣れない部屋で興奮したハルちゃんは、持参したおやつを食べず、トイレシートも使わず、結局一晩中落ち着かなかったそうです。
犬との宿泊旅行は、日帰り外出とは必要な準備がまったく違います。環境が変わることで犬の行動は普段と変わりますし、宿泊施設には施設ごとのルールがあります。この記事では、銀座本店で実際に聞いた「持って行けばよかった」の声をもとに、初めての旅行で本当に必要な持ち物を整理します。
旅行前に確認すべき、宿泊施設の3つのルール
持ち物を考える前に、まず宿泊先のルールを確認してください。ペット可の宿でも、施設によって細かな規定が違うからです。
客室内での過ごし方
ベッドやソファへの立ち入りを禁止している宿もあれば、専用のマットを敷けば可としている施設もあります。久保田シニアトレーナー(湘南辻堂・恵比寿店)によれば、「クレートを持参すれば、ベッド問題はほぼ解決します。普段からクレートトレーニングをしている子なら、知らない部屋でもクレートが安心できる居場所になるんです」とのこと。
食事場所とタイミング
レストランへの同伴可否、部屋食の有無、犬用の食事メニューの提供など、宿によって対応はさまざまです。食事時間が長引くと、待機中の犬が吠えたり興奮したりする原因になります。事前に確認し、待機用のガムやコングを準備しておくと安心です。
館内の移動ルート
エレベーターやロビーでの抱っこ・キャリー必須、リード着用の義務など、館内ルールは必ず事前に把握してください。特に大型犬の場合、移動経路が限定されていることもあります。
絶対に忘れてはいけない「環境変化」対策グッズ
旅行先では、いつもの場所と違う匂い、音、光があります。犬は環境の変化に敏感なので、「いつも通り」を再現できる持ち物が重要になります。
いつものフードと水
宿泊先でフードを切らしたり、慣れないフードで下痢をしたりするケースは珍しくありません。2泊3日なら、余裕をもって3.5日分を持参してください。水も、できればいつも飲んでいるものをペットボトルに入れて持って行くと安心です。環境省の「動物の愛護及び管理に関する法律」関連資料でも、動物の健康管理には「継続性のある給餌」が推奨されています。
使い慣れたクレートかキャリーバッグ
車移動ならクレート、電車移動ならキャリーバッグを普段から使っている子は、旅行先でもそこを「自分の場所」として認識します。銀座本店に通うトイプードルのマロンちゃん(2歳)の飼い主さまは、「箱根の宿でクレートを部屋の隅に置いたら、夜はそこで自然に寝てくれました」と報告してくれました。
クレート選びのポイント
旅行用クレートは、犬が立ち上がって方向転換できるサイズを選んでください。小さすぎると犬がストレスを感じ、大きすぎると車内で揺れて不安定になります。
普段使っているタオルやブランケット
自宅の匂いがついたタオルを1枚、クレートの中やベッドの上に置いてあげると落ち着きます。洗濯したてではなく、少し犬の匂いが残っているものがベストです。
宿泊施設で実際に必要になる「衛生管理」グッズ
ペット可の宿でも、清潔さの維持は飼い主の責任です。排泄処理や汚れ対策の準備を怠ると、次回から利用できなくなる可能性もあります。
トイレシートと排泄処理用具
普段と違う場所でトイレをしない犬もいます。いつもより多めにトイレシートを持参し、宿泊施設の指定場所でトイレタイムを設けてください。散歩中の排泄物を処理するビニール袋と、消臭スプレーもあると安心です。
足ふきタオルとウェットティッシュ
散歩から戻った後、部屋に入る前に足を拭くのがマナーです。宿泊施設によっては足洗い場がありますが、タオルは自分で用意する必要があります。使い捨てのペット用ウェットティッシュを多めに持って行くと、食事の後の口周りや、汚れた部分をさっと拭けて便利です。
粘着ローラーとブラシ
抜け毛の多い犬種の場合、ベッドやソファに毛がつきます。チェックアウト前に粘着ローラーで毛を取り除くと、施設側への配慮になります。寺原シニアトレーナー(銀座本店)は「チェックアウト時にローラーがけをしている飼い主さまは、スタッフから好印象を持たれやすいです。次回の予約もスムーズになりますよ」と話しています。
想定外のトラブルに備える「安全・健康」グッズ
旅行先では、普段と違う環境や刺激で犬の体調が変わることがあります。万が一に備えた準備も必要です。
いつもの薬と健康手帳
持病がある子、定期的に薬を飲んでいる子は、旅行日数分+予備を持参してください。健康手帳(ワクチン接種証明書を含む)も、宿泊施設によってはチェックイン時に提示を求められます。
予備のリードと首輪
リードが破損したり、首輪の金具が外れたりするトラブルは、旅行先でも起こります。予備を1セット持って行くと安心です。特に海や山でのアクティビティを予定している場合、リードの劣化や破損リスクは高まります。
応急処置用の簡易セット
ガーゼ、包帯、消毒液、ピンセットなどを小さなポーチにまとめておくと、軽い怪我の際に対応できます。旅行先の動物病院の連絡先も事前に調べ、スマートフォンに登録しておいてください。
夏場の旅行は熱中症対策も
6月から9月にかけての旅行では、保冷剤を入れられるバンダナや、携帯用の水飲みボトルを必ず持参してください。車内の温度管理にも注意が必要です。
あると便利な「快適さ向上」グッズ
必須ではないけれど、持って行くと旅行の質が上がるアイテムもあります。
お気に入りのおもちゃ
部屋で過ごす時間が長い場合、普段遊んでいるおもちゃがあると犬の退屈を紛らわせます。ただし、音の出るおもちゃは隣室への配慮から避けたほうが無難です。
待機用のコングやガム
食事中や観光中に犬を部屋で待たせる際、中におやつを詰めたコングを与えると、犬が落ち着いて過ごせます。長時間噛んでいられるガムも、待機時間のストレス軽減に役立ちます。詳しくは、SOPRAの幼稚園コースでも、待機トレーニングの一環として取り入れています。
折りたたみ式の食器と給水器
宿泊施設に食器が用意されていないこともあります。シリコン製の折りたたみ食器なら、荷物のスペースを取らずに持ち運べます。
よくある質問
Q. 初めての旅行は何泊くらいが適切ですか?
A. 1泊2日から始めることをおすすめします。犬の様子を見ながら、徐々に泊数を増やしていくのが安心です。いきなり3泊4日にすると、犬にも飼い主にも負担が大きくなります。
Q. 犬が車酔いしやすいのですが、対策はありますか?
A. 出発の2時間前には食事を済ませ、胃を空にしてから移動してください。クレート内の換気をよくし、こまめに休憩を取ることも大切です。どうしても酔う場合は、事前に獣医師に相談し、酔い止めを処方してもらう方法もあります。
Q. 宿泊先で吠えてしまわないか心配です
A. 事前にトレーニングコースで「ハウス」や「待て」のコマンドを練習しておくと、宿泊先でも指示に従いやすくなります。普段から吠え癖がある場合は、旅行前に改善トレーニングを受けることをおすすめします。
旅の準備は、愛犬の観察から
犬との旅行で大切なのは、持ち物リストを完璧にすることではなく、自分の犬の性格と行動パターンを理解することです。
鵜澤シニアトレーナー(六本木店)は「普段から興奮しやすい子なら、クレートを必ず持って行く。トイレの失敗が多い子なら、シートを多めに。その子に合わせた準備が、旅行の成功を左右します」と話しています。
ハルちゃんの飼い主さまは、2回目の旅行では普段使っているクレートと、いつものフード、使い慣れたタオルを持参したそうです。すると、初回とは違って夜もぐっすり眠り、朝は自分からトイレシートで排泄できたと報告してくれました。
まずは今日、愛犬の普段の様子をもう一度観察してみてください。どんなときに落ち着いているか、どんな場所を好むか、どのおやつに一番反応するか。それが、旅行の持ち物を決める第一歩です。

