年間4本。JR東海が運行する「わんわんエクスプレス」の2024年度の運行数です。通常の新幹線では、犬はキャリーバッグに入れて有料手回り品として車内持ち込みが基本。鳴き声や匂いに配慮し、飼い主さまは膝上や足元でずっと気を遣い続けます。ところがこの特別列車では、愛犬と同じ座席に座り、写真を撮り、ゆっくり会話しながら旅ができるのです。
銀座本店に通う柴犬のハナちゃん(4歳)の飼い主さまも、昨年この列車を利用して静岡の親戚宅へ帰省しました。「普段の新幹線では、ハナがキャリーの中で鳴かないかずっとドキドキしていました。でもわんわんエクスプレスなら、隣に座らせて窓の外を見せてあげられたんです」と話してくれました。
わんわんエクスプレスとは何か
わんわんエクスプレスは、JR東海が年に数回、季節限定で運行するペット同伴専用の新幹線です。正式には「こだま」の臨時便として設定され、東京駅・品川駅から新富士駅・三島駅・静岡駅方面へ向かうルートが一般的です。
通常の新幹線との違い
通常の新幹線では、ペットは以下のルールに従います。
- 縦・横・高さの合計が120cm以内のケースに入れる
- ケースと動物を合わせた重さが10kg以内
- 手回り品きっぷ(290円)を改札で購入
- ケースから出すことは禁止
- 膝上または足元に置く
一方、わんわんエクスプレスでは専用車両内に限り、座席にペットを乗せることが認められています。リードを付けていれば、キャリーから出して抱っこしたり、隣の席に座らせたりできる点が最大の特徴です。
対象となるペット
犬だけでなく、猫や小動物も対象です。ただし爬虫類や猛禽類など、他の乗客に恐怖を与える可能性のある動物は不可とされています。また、厚生労働省の動物検疫所が定める検疫対象動物(狂犬病予防法に基づく)を連れて国内移動する場合は、事前に必要な手続きを済ませておく必要があります。
予約方法と料金
わんわんエクスプレスは通常のきっぷ販売ルートでは買えません。専用の申し込みフォームまたは旅行代理店経由での事前予約が必須です。
申し込みの流れ
運行日の約1か月前にJR東海ツアーズのウェブサイトで詳細が公開されます。以下の手順で申し込みます。
- JR東海ツアーズの専用ページにアクセス
- 希望の乗車日・区間・人数・ペット数を入力
- 座席を選択(2名+1頭、または1名+1頭が一般的)
- クレジットカードまたは銀行振込で支払い
- 乗車票が郵送またはメールで届く
座席は早い者勝ちです。過去には公開から数時間で満席になったケースもあります。
料金の目安
東京駅から静岡駅までの場合、大人1名+犬1頭で片道約8,000円(乗車券+特急券+ペット料金を含む)が相場です。通常の「こだま」自由席と比べると約2,000円高くなりますが、専用車両の快適さとストレスの少なさを考えれば、多くの飼い主さまが「納得できる価格」と感じています。
注意
ペット料金は頭数制ではなく、座席利用の有無や体重によって変動することがあります。予約時に必ず確認してください。
当日の乗車準備
予約が取れたら、当日に向けた準備が重要です。銀座本店の寺原シニアトレーナーは「普段、電車に慣れていない子は、事前に短距離の在来線で練習しておくと安心です」とアドバイスしています。
持ち物チェックリスト
- リードと首輪(予備も)
- キャリーバッグ(乗降時や待機時に使う)
- ペットシーツ(車内でのトイレ対策)
- ウェットティッシュ
- 水とフード(長時間移動の場合)
- お気に入りのおもちゃやブランケット
- 狂犬病予防接種済票のコピー
車内では他の乗客もペット連れですが、すべての犬が他犬に友好的とは限りません。吠えやすい子や興奮しやすい子には、SOPRAのトレーニングコースで事前に「マット待機」や「落ち着きのキープ」を練習しておくと、当日がぐっと楽になります。
乗車前の運動
出発の1〜2時間前に、駅周辺の公園で軽く散歩やトイレを済ませておくのが理想です。東京駅なら皇居外苑、品川駅なら高輪方面に犬連れで歩ける場所があります。排泄を済ませておけば、車内でのトラブルリスクが減ります。
車内での過ごし方
専用車両内とはいえ、マナーは必要です。他の飼い主さまへの配慮を忘れずに、愛犬との旅を楽しんでください。
座席での配置
座席は指定されますが、多くの場合2名掛けまたは3名掛けのボックスシートです。犬を隣の席に座らせる場合は、必ず敷物(ブランケットやペットシーツ)を敷いてください。毛や汚れが直接シートに付くのを防ぎます。
小型犬なら膝上、中型犬以上なら足元に伏せさせる飼い主さまもいます。愛犬の性格と体格に合わせて、落ち着ける位置を探してください。
他のペットとの距離
通路を挟んだ向かい側や前後の席にも犬がいます。好奇心旺盛な子は、他の犬をじっと見つめたり、近づこうとしたりすることがあります。リードは短く持ち、飼い主さまの許可なく他の犬に接触しないようコントロールしてください。
もし愛犬が吠え始めたら、すぐに注意を自分に向けさせます。おやつやおもちゃで気を逸らし、落ち着いたタイミングで褒める。この繰り返しが、車内でのストレスを減らします。
写真撮影の配慮
わんわんエクスプレスでは、多くの飼い主さまが記念撮影をします。ただし他のペットや飼い主さまが写り込む場合は、一声かけてから撮るのがマナーです。SNSへの投稿時も、他人の顔や犬が特定できないよう配慮してください。
降車後の注意点
目的地に着いたら、速やかにホームへ移動します。多くの犬が一斉に降りるため、改札付近は混雑しがちです。
トイレと水分補給
駅構内や駅前の広場で、愛犬にトイレの機会を与えてください。長時間の移動で喉が渇いている可能性もあるため、水を飲ませます。ただし駅ビル内のペット同伴可否は施設ごとに異なるため、事前に調べておくと安心です。
帰路の予約
わんわんエクスプレスは往路と復路がセットで販売されることもありますが、片道のみの場合もあります。復路を通常の新幹線で帰る場合は、再びキャリーバッグに入れて手回り品扱いとなります。往復とも特別列車を使いたい場合は、予約時に確認してください。
利用者の声と現場からの所感
銀座本店に通うトイプードルのモコちゃん(2歳)の飼い主さまは、昨年秋のわんわんエクスプレスで伊豆方面へ旅行しました。「モコは普段から電車が苦手で、キャリーに入れると震えるんです。でもこの列車では膝の上で景色を見せてあげられて、途中で寝てくれました。帰ってきてから、以前より落ち着いて電車に乗れるようになった気がします」と話していました。
一方で、興奮しやすい犬や他犬が苦手な犬には、車内の刺激が強すぎる場合もあります。隣の席のゴールデンレトリバーが吠え続けたケースもあったと聞きます。事前にパピートレーニングや社会化レッスンで「知らない人や犬がいる環境」に慣れさせておくと、当日のストレスが減ります。
今後の展開と課題
わんわんエクスプレスは人気が高く、運行本数を増やしてほしいという声が毎年上がっています。しかし車両の確保やダイヤ調整の都合で、現時点では年4本程度にとどまっているのが実情です。
また、ペット同伴旅行の需要は高まる一方で、公共交通機関としての安全性や衛生管理の課題も残ります。国土交通省が定める旅客運送約款の範囲内で、どこまでペットフレンドリーなサービスを拡大できるかは、今後の検討テーマです。
一部の私鉄では、ペット同伴専用車両を定期運行する試みも始まっています。JR東海以外の鉄道会社も、将来的に同様のサービスを検討する可能性はあります。
ふりかえり
わんわんエクスプレスは、愛犬と一緒に座席で旅ができる貴重な機会です。年間4本という限られた運行ですが、予約が取れれば、普段のキャリー移動とは違う特別な体験ができます。
ただし、どんなに快適な環境でも、愛犬が落ち着いて過ごせるかどうかは、日頃のトレーニングと社会化の積み重ねにかかっています。銀座本店では、電車やバスでの移動を想定した「マット待機」や「落ち着きのキープ」を、鵜澤シニアトレーナーをはじめとする現場スタッフが個別にサポートしています。
19年間で出会った20万頭から学んだ一番のこと──犬は飼い主さまの心を映す鏡だということです。あなたがリラックスしていれば、愛犬も安心して旅を楽しめます。次のわんわんエクスプレスの運行日を、ぜひチェックしてみてください。

